海を見る人/小林泰三

小林泰三のSF短編集。 分類としてはハードSFだが描かれるストーリーはロマンチックで哀愁に満ちている。 ハードSFとしてのセンスオブワンダーとのバランス感も良く、久しぶりに飛浩隆のような日本人離れしたストーリーテラーとしてのセンスを持った作家だな…

湖畔の愛/町田康

九界湖の畔に建つホテルにまつわる3遍。 町田康節全開の上機嫌で饒舌な語りで引き込まれる。 方向は違うのだが筒井康隆を想起する文体だなと感じる。 嫌いじゃない。湖畔の愛(新潮文庫)作者:町田康新潮社Amazon

心のナイフ(混沌の叫び1)/パトリック・ネス

図書館のヤングコーナーを物色して読み始めたシリーズ第1部。 開拓移民した惑星で感染した「ノイズ菌」によって女性が死に絶え、男性は自分の思考が周囲に漏れ伝わるようになってしまった世界の話。動物もつぶやく。 なかなかダークで重たい展開だがジュブナ…

高野聖・眉かくしの霊/泉鏡花

泉鏡花をちゃんと読むのは初めて。 時代が違うので文章が固くて読みづらい印象でなかなか手が出なかった。 でも今回読んでみてその印象はかなり改善された。むしろこの文体がますます味わい深く、独特で幻想的な世界を作り出しているようで、のめり込むよう…

オジいサン/京極夏彦

京極夏彦の妖怪ものでない連作集。 70歳を超えた独身男性のモノローグで人間の老いについて赤裸々に浮かび上がらせる。滑稽だったり切なかったり。思考があちこちとんだり戻ったり忘れたり、饒舌なのに一貫性がない感じが老いをリアルに実感する。なかなか面…

クトゥルー 8/H.P.ラヴクラフト他

青心社のクトゥルー集8冊目。 久しぶりにラヴクラフトの「インスマスを覆う影」を読んだけどやっぱり傑作だな!クトゥルー〈8〉 (暗黒神話大系シリーズ)作者:H.P. ラヴクラフト青心社Amazon

増山超能力師事務所/誉田哲也

増山超能力師事務所 (文春文庫)作者:誉田哲也文藝春秋Amazon武士道シリーズがなかなか面白かったので手を出してみたのだが、何というか意外なほど面白くなかった。武士道シリーズでは2人の主人公のモノローグで心の機微を繊細に描き出していたのにこの作品で…

クトゥルー7/H・P・ラヴクラフト他

様々なクトゥルー作家の作品8篇。 収録されているのは「星から訪れたもの」「闇をさまようもの」「尖塔の影」「永劫より」「アッシュールバニパルの焔」「セイレムの恐怖」「イグの呪い」「閉ざされた部屋」。 ひとつひとつは何気ないものもあるが、クトゥル…

クトゥルー6/ラヴクラフト&ダーレス

以前まとめて買い込んでしばらく読むのを中断していた青心社のシリーズ。6冊目を読了。 「恐怖の巣食う橋」「生きながらえるもの」「暗黒の儀式」の3遍で全てラヴクラフトとダーレスの共著名義。あんまり立て続けに読むとマンネリで飽きてしまうが、久しぶり…

まほろ駅前狂想曲/三浦しをん

まほろ駅前シリーズ第3作にして完結編。 無農薬野菜を生産・販売する謎の団体にまつわる騒動とその顛末。 まほろワールド完成度高し。面白かった。まほろ駅前狂騒曲 (文春文庫)作者:三浦 しをん文藝春秋Amazon

勝手にふるえてろ/綿矢りさ

中学時代の片想いのイチと、会社の同期で積極的にアタックしてきたニ。2人の狭間で揺れる主人公ヨシカの内面世界が瑞々しい感覚で溢れて来る。勝手にふるえてろ (文春文庫)作者:綿矢 りさ文藝春秋Amazon

死にぞこないの青/乙一

新任の先生が原因で不当なイジメにあう主人公の少年の独白。徐々に出来上がるイジメの構図が生々しく空恐ろしい。ホラーテイストだが本質はちょっと違うのかなと感じる作品。死にぞこないの青作者:乙一幻冬舎Amazon

ついてくるもの/三津田信三

ついてくるもの (講談社文庫)作者:三津田信三講談社Amazon

脳髄工場/小林泰三

小林泰三を読むのは2冊目。今回も非常に面白く読んだ。素晴らしい。脳髄工場 (角川ホラー文庫)作者:小林 泰三KADOKAWAAmazon

首七つ/ひろのみずえ

首七つ作者:ひろの みずえ大日本図書Amazon

羊をめぐる冒険/村上春樹

僕&鼠シリーズ第3作。 1、2作目に比べるとタイトルの「冒険」の文字どおり、ストーリーに明快な展開があって読みやすい印象。大小の謎が散りばめられ飽きさせない。一気に読まされてしまった。 ただこれがなぜ青春3部作と呼ばれるか今の所わたしには腑に落ち…

フリオ・コルタサル/奪われた家/天国の扉 動物寓話集

コルタサルの短編集。解説によると本作が「真の処女作」だそうだ。 他のアンソロジーなどで最初の2篇「奪われた家」「パリへ発った夫人への手紙」は既読。両方とも奇妙で心が不安になる不思議な味わいで大好きな作品。訳者が違うと作品の印象が変わる事があ…

マッドボーイ・シリーズ/辻真先

朝日ソノラマ文庫で読んだ辻真先のSF作品の双璧のもう一方はこれ。マッドボーイ・シリーズ3部作。三枚目で恋人も作れない恭太=マッドのボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー。 テレビマンの辻真先のユーモアたっぷりの固有名詞設定でニヤリとし、ロボットのリ…

株式学園の伝説シリーズ/辻真先

朝日ソノラマ文庫は今で言うところのライトノベルの走りで私も随分と読み漁った。その中で辻真先はポテト・スーパーシリーズで推理小説の面白さを開眼させられた感が強いが、この株式学園の伝説シリーズ3部作と、マッドボーイ・シリーズ3部作のSF作品も大好…

1973年のピンボール/村上春樹

僕と鼠シリーズ第2段。 相変わらずストーリー的な面白さはよく分からないが、最初読んだ時より慣れたのか、何やら言葉にうまく表せない面白さをそこはかとなく文章の塊の中に感じるようになってきた。豊饒な言葉と高いエントロピーで内的世界を無限に押し広…

かにみそ/倉狩聡

かにみそ (角川ホラー文庫)作者:倉狩 聡発売日: 2015/09/25メディア: Kindle版

美しい家/加門七海

美しい家 (光文社文庫)作者:加門 七海発売日: 2014/08/29メディア: Kindle版

コンパス・ローズ/アーシュラ・K・ル=グウィン

短編集。 分かっていたけど手強かった。 読み終わるまでに10回くらい寝落ちした。コンパス・ローズ (ちくま文庫)作者:アーシュラ・K. ル=グウィン発売日: 2013/02/01メディア: 文庫

ガン病棟のピーターラビット/中島梓

栗本薫が亡くなったのは2009年5月末。もうすぐ12年と言うことか。訃報に接した時の衝撃と落胆もようやく薄れて冷静に読めるかなと本書を手に取った。 ガンで入院してとりあえずの退院をするまで、2008年1月から2月にかけて記述されたエッセイ。あとがきが200…

ジウI, II, III/誉田哲也

武士道シリーズがなかなか面白かったので誉田哲也の他の作品に手を出してみた。 警視庁の対照的な性格の2人の女性を主人公に、徐々にスケールが大きくなる犯罪事件の顛末がスリリングに描かれている。一気に読まされてしまった。こういう作風が誉田哲也のメ…

ジュージュー/よしもとばなな

ひっさしぶりによしもとばななを読んだ。ジュージュー (文春文庫)作者:よしもと ばなな発売日: 2014/01/04メディア: 文庫

祝祭と予感/恩田陸

「蜜蜂と遠雷」に関する様々なエピソードをまとめた短編集。本編とは別の角度から世界が補強されて更に全体的に味わいが深くなる感じ。面白く読んだ。祝祭と予感 (幻冬舎単行本)作者:恩田陸発売日: 2019/10/02メディア: Kindle版

マクベス/シェイクスピア著・松岡和子訳

蜷川幸雄の芝居は見たが原作ちゃんと読むのは多分初めて。 シェイクスピアって子供の頃のイメージは格調高い文学の代表格みたいなイメージだったけど、今読むと超エンターテイメントな作品なんだなあと思う。人間の普遍的な心理を豊潤な言葉の奔流で表現する…

Nのために/湊かなえ

湊かなえの4冊目。 実質のデビュー後に書いた最初の作品らしい。 小説としての構造を綿密に考えた感じ。 徐々に真実が明かされていくストーリーは湊かなえらしい。 面白く読んだ。Nのために (双葉文庫)作者:湊かなえ発売日: 2020/06/08メディア: Kindle版

かがみの孤城/辻村深月

辻村深月を読むのは初めてで期待して読んだ。 いわゆる不登校状態の主人公が鏡の向こうの城に行き望みを一つ叶える鍵探しを出題される、というファンタジー王道設定だが、主人公の抱える問題や心の描写が丁寧にされていて苦しくなる。他の登場人物も徐々に人…