「ガムラン武者修行 音の宝島バリ暮らし/皆川厚一」

折角ガムラン体験中なのでもう少し知識をつけてみようかと図書館で文献を探して真っ先に見つかった本。ぱらぱらとめくって見たら、あれ、今習っている先生の名前が文中に出てきている。この本は著者がバリに留学していた時の話で、どうやら先生は同じ時期にバリに留学していたらしい。こりゃ良いや、次回の講義の時に話のネタになるかな、程度の軽い気分で読み始めたら面白くて止まらなくなってしまった。著者がバリガムランにどのようにして出会い、魅せられ、そして留学生活の中で何を掴んで行ったのか、非常にリアルに追体験できた気分。単に技術を習得すれば良いというのではない深さがあることが分かった気がする。


ガムラン体験講座で疑問に思っていたこともいくつか明確になった。


前回ガムランの日記で書いた、ポロスとサンシは楽器の名前ではなく、パートの名前だった。ガムランは基本的に雌雄、父母というようなペアの概念が根底にある。楽器でソロ楽器は少なく大抵は同じ楽器でも2台が一単位となっている。そしてこの2つで一つ、というのが演奏自体にも当てはまる。つまりある一つのパートを2つに分けて演奏する。いや、逆か、2つのパートで一つのリズムを作り出すといった方が良いのかも。これがガムランが音の精緻な掛け合いのモザイクのように聞こえる一因でもある。コテカンと呼ばれる技法。本の説明だとポロスが基本的に正拍を刻むリズムパターンで、サンシがポロスの休符を縫うように刻む、すなわち裏拍メインのリズムパートということらしい。
なーるほど、講義で最初に練習したGilak(ギラ)のBarisという曲ではレオン(本の表記だとレヨン)がこのコテカン担当でガンサがメロディだった。2曲目のSinom Ladrangではガンサがコテカンをやりトロンポンがメロディをやっているわけだ。うん、すっきりした。私はとりあえずこんどガムラン好きな人に自己紹介する時には「サンシ好きです」といえば良いことになりそうだ。



音階(ララス)について、ペロッグ音階とスレンドロ音階があると書いたが、今講座で使っている楽器はペロッグ音階らしい。ゴン・クビヤールでは大抵こちらの音階と書いてある。また、スレンドロは半音のような狭い音階が無いとのことだが、憶えた音階は明らかに音階が狭いところと広いところがある。


もういっちょ、これは講義とは関係ないがアンクルンに関する記述には驚かされた。アンクルンは火葬を見守る際に演奏するのだそうだ。私にとってアンクルンの演奏といえば仙波清彦とはにわ隊の名曲「オレカマ」であり、涼やかな音色でしかも楽しげな印象しか持っていなかった。

ガムラン武者修行―音の宝島バリ暮らし

ガムラン武者修行―音の宝島バリ暮らし