「象られた力/飛浩隆」

読了。SF中編集。すばらし。
「デュオ」「呪界のほとり」「夜と泥の」「象られた力」の4編が収められています。私はこの中の「象られた力」をたまたまSFマガジン掲載当時に読んでその面白さにやられた記憶があります。当時は若かったせいもありますが、日本人作家の書くSFはどうも今一、やっぱり海外作品は格が違うよなぁ、みたいな思い込みが少なからずありました(今はそんな感覚は特にないですけどね)。そんな時にこれを読んで「日本人でこんな話が書ける人がいるんだ、すごい」と目から鱗がぼろりと落ちました。解説をみたら「象られた力」が掲載されたのは1988年とのことで何と今から17年も前に書かれた作品です。大幅に改訂されたとの事ですがとにかく今読んでも新鮮で非常に面白いです。惑星の謎の消失。惑星で発達していた図像文化。その図像を記録するために作られたと言われる円柱の不可解な空白領域。見えない"図形"の謎に挑む腕利きのイコノグラファー。。。燦然としたイメージとそれを浮き彫りにする精緻な描写そしてストーリーの展開にくらくらきます。私的にかなりツボ。その他の作品はおそらく初めて読みました。「夜と泥の」も好き。「デュオ」もいい感じです。寡作であまり広く知られていない作家ということらしいですがもっと読みたいです。まずは既刊の長編「グラン・ヴァカンス」を読んでみなくては。

象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA)

象られた力 kaleidscape (ハヤカワ文庫 JA)