「ディアスポラ/グレッグ・イーガン」

読了。生半可にカジると歯茎から血が滴るようなハードSF。人類のほとんどがコンピュータ内のソフトウェアとして"生きて"いる時代という設定。しょっぱなはこの世界で一人の人間がソフトウェア上の"子宮"の中で人間として形作られ、その後これが意識を持ち自己と周辺世界を認識していく経過が念入りに綴られていくのですが、、、


イーガンの描写力には感心させられますなぁ。最初のこれだけのネタでも充分楽しめました。学生の頃に家に帰る電車の中で友人と「生物(できれば人間)をコンピュータ内で生きているかのようにシミュレートするにはどうすれば良いか」という議論をしたことを思い出しました。「うーん、生物として活動するにはまずやはり生物としての動機付けが必要だよねぇ」「自分を維持するために必要なものと、それを得ようとする本能、得るための手段、という感じかね」「生命の定義の一つは自己と同じ性質を持った新たな個体を作ることだから、そういう機能も考えないと」とか何とか言ってたような。こう書いてみると何かちゃっちーくて間抜けな感じだけどそのときは真面目に一生懸命考えた記憶があります。


話を戻すと、この冒頭のエピソードは全体から考えるとこの本の大前提の世界観を伝えるという部分であり、あくまでも土台なだけ。実はまだまだ奥が深いのでありました。この先の話の展開は読んでいない人の迷惑にならないように伏せますが、素粒子宇宙論をベースにとにかく壮大なスケールの内容です。冒頭に「ハードじゃー」と書きましたが、実はストーリーとしては至極読みやすいし感動できる内容です。非常に面白かったのでこの分厚さにもかかわらず数日で読んでしまいました。


ディアスポラ

ディアスポラ