「エレンディラ/G.ガルシア・マルケス 鼓直/木村栄一 訳」

マルケスの短・中編集。
先日芝居(坂手洋二脚本、蜷川幸雄演出)を観て、原作の方を読んでみたくなった。
芝居の方は休憩も入れると4時間という超大作だが原作は中編でさらりと読める。

  • 大きな翼のある、ひどく年取った男
  • 失われた時の海
  • この世でいちばん美しい水死人
  • 愛の彼方の変わることなき死
  • 幽霊船の最後の航海
  • 奇跡の行商人、善人のブラカマン
  • 無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語



書評等には「大人のための残酷な童話として書かれた異色作」といった説明が必ずついている。
エレンディラの芝居の一幕目を観終わったときに、エレンディラはなんでこんなにばあちゃんに従順なんだろう、納得行く理由を印象付けてくれないと芝居として浅く感じてしまうなぁ、と思ったのだが、原作でも気持ち良いくらいスパっと描写なし。この辺は確かに「童話的」な部分を感じた(なるほど原作読んでいれば芝居の方も納得だった)。しかしその他の作品は別に「異色」と掲げるほどの違和感は無かった気がする。まぁ、云々言えるほど読んでないのだが。
ラテンアメリカ文学の奇妙なテイストを求めている私にとってはこの本全体として結構イケてる作品で、巡りあえて嬉しい気持ち。


「大きな翼のある、ひどく年取った男」は坂手洋二が脚本の中で「エレンディラ」にモチーフを取り込んでいる短編。これ単体で結構好きだ。
「この世でいちばん美しい水死人」これが私の脳内視覚に強く残った。
「無垢なエレンディラと無情な〜」なんと言ったらよいのだろうか、ラテンアメリカの呪術的な日常感が溢れる世界。芝居を先に見てしまってまだそちらの印象が強いのでそのうち再読したい。


芝居の方は、なんでウリセスが歌をうたうのかがちょっと疑問。あの芝居の中では唐突で浮いているとしか感じられなかった。

エレンディラ (ちくま文庫)

エレンディラ (ちくま文庫)