沖田修一監督「モリのいる場所」@銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ

2018年公開の映画。実在の画家、熊谷守一を描いた作品。銀座エルメスのミニシアターにて鑑賞。
昭和49年、94歳の「モリ」こと守一は30年間自宅を出ることなく生い茂る庭の木々や生物を観察することを日課にしているが、家には様々な人々が寄り集い何かと騒がしい。モリの何事にも影響されず不動の姿勢であることと周囲の人々のどたばた感が対比的に良い滑稽味を出していて、静かで暖かな気持ちと共に思わずくすくす笑ってしまう。熊谷守一自身への興味がわいてしまう作品だった(昭和天皇の展覧会でのお言葉や、「蟻は2番目の左足から歩き始める」という話は実話なのだろうか?)。
それにしても錚々たる俳優陣。主演の山﨑努と樹木希林の存在感は圧倒的だし周辺を支える面子も個性派ぞろいで嵌っている。家事を手伝うモリの姪っ子役の池谷のぶえもたまらない。
樹木希林最晩年の出演作の一つでもあり、つい先日10月19日に交通事故で帰らぬ人となったザ・ドリフターズ仲本工事がテレビに映るシーンがでてきたということもあって、何か時代と郷愁とそこはかとない悲しみを感じる映画鑑賞でもあった。