しずかな日々/椰月美智子

ということでもうひとつ同じ作者による児童文学作品。こちらは野間児童文芸賞坪田譲治文学賞のダブル受賞。「12歳」は小6女子を描いた作品なのに対してこちらは小5男子の成長を描いている。
子供にとって自分を受け入れ仲良くしてくれる仲間ができるのは人生の本当に大きな転機だと思う。家庭の事情で転校しなければならないと言われた主人公「えだいち」はシングルマザーである母親との生活ではなく今まで一度しかあったことがない祖父との生活を選ぶ。何か特別大きな事件が起こるわけではないが自分にとって大事なものを自分自身で掴み、守る決心をするという心の大きな変化点とその後をしずかに優しく表現していて好印象。母親との葛藤は抑え目だがほろ苦く作品の低音で常に鳴り響いている。