街角の書店 (18の奇妙な物語)/中村融・編

<奇妙な味>とは江戸川乱歩の造語だそうだ。言い得て妙。私が大好きなジャンルはまさにこれ。
編者の中村融のあとがき冒頭にアンソロジーを編むことに関して記載されている。

「作品の選び方は大事だが、作品の並べ方はそれ以上に大事である」

あとがきによると編者がこのアンソロジーを編んだのは「偏愛する三篇の小説を復活させたかったから」であり、その小説とは「肥満翼賛クラブ」「お告げ」「街角の書店」。傾向の異なるこれらをうまく共存させるために「グラデーションのような配列」を考えてこの並びにしたとのこと。
このアンソロジーは確かに<奇妙な味>で一つのコンセプトだがそれぞれの味わいは微妙に異なっていて飽きさせない。見事なグラデーションだと思う。
個人的にはフリッツ・ライバーの「アダムズ氏の邪悪の園」が質・量ともに読み応えがあった。短いながら印象的なのは編者が偏愛する3篇がいろいろな意味で該当するのと、あとは「M街七番地の出来事」「大瀑布」が良かった。ノーベル賞作家スタインベックが風船ガムについてこんな話を書くとは、という驚きもあり。
中村融の編んだ他のアンソロジーを読んで見たくなった。