増山超能力師事務所/誉田哲也

武士道シリーズがなかなか面白かったので手を出してみたのだが、何というか意外なほど面白くなかった。武士道シリーズでは2人の主人公のモノローグで心の機微を繊細に描き出していたのにこの作品ではそれがない。ないと言うか、描こうとして見事に滑ってる感じ?
超能力が科学的に立証されて社会に認知され浸透しつつある世界を背景に、超能力を活用して依頼を解決する探偵事務所のメンバーの様々なエピソードが展開される。
超能力者が「超能力師」として認定資格制度になっていたり、リアリティを醸すディテールはいろいろ作り込んである印象。ただSF好きにはちょっと物足りなかったりアラが目立つ部分もあり。まあそれは本題ではなく誉田哲也の良いところはそう言う背景をよく登場人物の心象風景に馴染ませた上で人の心の動きを普遍的に創造できるところなのだと思っていたのだけど本作はその点で納得感なし。ストーリー展開もこころ沸き立たないし。所長の奥さんのエピソードは謎展開で一瞬スリリングだったけど消化不良、事務所メンバーの愛人はなんで愛人の位置付けで納得してるのか全然こころの動きが納得できない。超能力を持ったが故の葛藤や絶望やそこから這い上がって前向きに生きようとする話はSF界のメジャーテーマの一つだし名作も多い。この作品は頑張って商用作品レベルまでカタチにしたけど描ききれなかったなあという印象を拭えない。
続編もあるが同じレベルの気持ち悪さを感じるのは避けたいし、立て続けにつまらなかったら辛いので耐性が戻るまでしばらく手を出さないことにする。
武士道シリーズが面白かっただけに残念。