姉飼/遠藤徹

2003年の日本ホラー小説大賞の大賞受賞作品。
近親相姦的世界を思わせるタイトルだが、この「姉」というのが縁日の見世物小屋で見世物になるような一種の怪物的な生物=人間を指している。串刺しにされた痛みに叫び、凶暴で迂闊に近づくと肉を噛みちぎられるという危険な「姉」。この姉の飼育に取り憑かれた男の話。SM的な昏く熱に冒されたようなストーリー。
独特な世界を構築して読ませるが、最後もう一歩踏み込んでひねりを加えられたのではないかという惜しさも感じた。


ところで今でも縁日の見世物小屋ってあるのだろうか。私は小さい子供の頃に縁日で見かけた「ろくろっ首」だったか「象女」だったかあるいは「一つ目」だったか、詳細は忘れてしまったが、とにかくそれが恐ろしくておそろしくて怯えて逃げた記憶がある。今にして思えば日本の民族文化?風俗文化?の一つとして見ておきたかったなあと強く思う。

姉飼 (角川ホラー文庫)

姉飼 (角川ホラー文庫)