粘膜人間/飴村行

2008年の第15回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作品。
タイトルが異様だしチラ見した評判も「発想が凄い」的な感じで期待して読んだのだが、私的には、うーんちょっと肩透かしだったかなあという感が否めない。
一番の問題は「粘膜人間」っていう特殊キャラが出てきて想像を超える設定が説明される事を楽しみにしていたのに、明確なそう言うものが出てこないこと。河童は出てくるけど。河童の事を言っているのか、比喩的に登場人物の誰かを指しているのかとか、よく分からなかった。
人体破壊の壮絶描写は確かにあまり目にしないレベルで一読の価値はあるかもしれないが、残虐すぎるだけで味わいが薄いと感じてしまった。
例えば筒井康隆も似た表現方法で残酷描写をこれでもかと言うほど畳みかけてくる作品があるが、単にヒステリックな表現を目指しただけではなくそのような描写の中でも笑いや人間性など別の何かを感じさせてくれるうまさがある。この作品にはそういう何かが足りていない印象を受けた。
とはいえ賞を獲得しただけのことはあって異様な世界観とストーリー展開で一気に読んだ。あまり人には薦められないけど。
知らなかったがこの後「粘膜〜」というタイトルで何作か出ておりそれなりに評価されているようだ。機会があったら読んでみたい。