奇奇奇譚編集部 怪鳥の丘/木犀あこ

奇奇奇譚シリーズ第3作、完結編。
面白くないながら最後は上手くまとめてくるかと淡い期待で読んで見たが、残念ながら期待を超えることなし。扱っているネタや目指そうとしている世界観はまあまあ面白そうなのに、そのイメージを読者にうまく伝える筆力不足の感が否めない。
そもそも主役二人のキャラがうまく噛み合っていない。前にも書いたかもしれないが、惣介はなぜ善知鳥にこれだけ恩義を感じているのかよく分からないし、善知鳥はなんでこんなにウジウジと魅力を感じないキャラの惣介に特別に入れ込んでいるのかさっぱり分からない。惣介のデビュー作に惚れ込んでいるらしい事は記載されているが、プロの優秀な編集者が常にその本を持ち歩くほどのどんな思い入れがあったのかが一切描かれていないので、関係性が薄っぺらく感じる。隙間を読者に想像力で穴埋めさせようと言うのであれば乱暴この上ない。ストーリー展開にも同様の薄っぺら感がつきまとう。
作者が描きたかったテーマはなんなんだろう。男同士の友情や信頼の美しさとか?永遠や不滅性とそれに翻弄される人間の弱さや儚さ?どれも描けていないし伝わらない。まるでボリュームを極限に絞って出来の悪いアニメを見ているようだ。主人公は感情をあらわに叫び、シーンは劇的に進んでいるようだが、見ている方は入り込めずにポカーンと外側からただ眺めるだけ。
心の機微や物事の展開をもっと深掘りしてリアリティのある文章が書けるようになる事を期待したい。

奇奇奇譚編集部 怪鳥の丘 (角川ホラー文庫)

奇奇奇譚編集部 怪鳥の丘 (角川ホラー文庫)